KIC小さな講演会「紙芝居 旧ソ連・抑留体験記」


日時:平成16年3月21日(日)午後2時

場所:かしわインフォメーションセンター

漫画で見る旧ソ連・抑留体験記

プレス報道関連

写真・文 / 「旧ソ連抑留画集」HP管理者 木内正人


講演会にむけて

 「小さな講演会」というタイトル通り、定員30名の講演会を開催するにあたり、父も多少迷っていながらもインフォメーションセンターの方々の勧めもあって実行することになりました。内容的には父の作品の中から10点をセンターのスタッフの方が抜粋し、紙芝居形式でそれらの絵のエピソードを話すと言うものです。
 展示イベントが開催されてから3週目の休日ということで、スタッフの方々は前もってマスコミ関係にお知らせしてあったせいか、この日は大勢の見学者や聴講者が集まりました。

 前日は冷たい雨が降りましたが21日当日はおだやかな晴天になりました。もし昨日だったら、お客さんの入りに影響が出てしまったかも知れません。我々親子が会場入りしたのは、講演30分前。すでに座席や演台のセッテイングは終了し、藤田局長や企画担当の川舩さん、そしてボランティアスタッフの皆さんがスタンバイしていました。
 今回、父は友人には講演会のことをお知らせしていなかったのですが、新聞の記事を読んで何人かが駆けつけてくれました。また、以前HPで知り合った大学生の方で、すでに立派な社会人になられた
クララさんとタケヤンさんも来て下さいました。多くの方からご声援を受けて本当に幸せに思います。


体験としての歴史

 10枚の絵の中にあるエピソードを話す父に、来て下さった方々は真剣に耳を傾けて下さいます。時折話す父の冗談に笑いながらも、絵にあるひとつひとつのエピソードを熱心に聞いて頂けました。会場には年配の人から若い人まで年齢も様々です。しかし、歴史という延長線上の中に今もみんなで時間を共有しているのです。

 父はあえて悲惨な話はしません。それは「辛い時代なのだから、みんな同じく辛いのだ。」という、父の考えもあります。それを乗り越えて仲良くすることこそ、今最も求められていることだと思います。約1時間かけて10枚の絵を説明し、その後は局長の司会により質疑応答となりました。

 聴講者の方々からの質問は多岐にわたっています。それもそのはず、父の絵に描かれる世界は戦後の情報の中で植え付けられた“シベリア抑留”とはだいぶイメージが違うからです。多くの人には過酷な強制労働のみが強調され、それ以外はほとんど知らないからでしょう。男女共同社会ゆえに芽生えた捕虜とソ連女性との恋、捕虜の食料事情の悪さはソ連国民も等しかったこと、そして全ての人が戦争なんかしたくないこと。体験としての歴史は、事実を歪めることなくありのままを語ることだと思います。


スタッフの皆さんのご活躍

 「かしわインフォメーションセンター」の企画によって実現した「小さな講演会」。これを実行するにあたり、スタッフの方々のご活躍によって大成功となりました。局長の司会進行の上手さと、センターの皆さんのチームワークの素晴らしさ、そして市民との対話を大切にするスタッフ皆さんの姿勢にあらためて敬服する次第です。
 戦争をテーマにした話題は、とかく政治や思想と結びつけて考えられがちです。本来、政治も思想も“人ありき”だというのを忘れてはいないでしょうか。人間は裸にされてしまうと、傷つきやすい肉と皮しかありません。だからこそ愛しみと優しさを持つことこそが、最も尊むべきものだと思います。
 そうした意味で、「かしわインフォメーションセンター」の皆さんが、街の案内役として“人とのふれあい”や“優しさ”を大切にする方々であるがゆえに、父の絵の中のメッセージを深く理解し、そしてイベントとして実現できるのだと思います。それが、講演会の成功に繋がったのだと思います。そして、私自身もスタッフの皆さんとご一緒に参加したイベントによって、20年近く住んで今日はじめて“柏の人”としてお役に立てたような気がしています。皆さんと同じ“柏”に住んでることを誇りに思います。


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