そのとき、天文の博士が、宮中へあがってきて、
「ないないに、申し上げたいことがございます。」
と、言うので、別の部屋で皇帝が、博士の話を聞くと、
「昨夜、天を見ておりますと、南極老人星が、だんだん帝座の星に近づいて参りまして、今夜は、すぐそばまで参っております。ことによりましたら、今、陛下の前におります不思議な老人は、その老人星の精かもしれませぬ。」
と、言うのです。
そのとき、正殿の方で、みんなのさわぐ声が、聞こえてきました。

もどる  すすむ