皇帝が、急いで行って見ると、不思議な老人の姿がありません。
「これは、どうしたことじゃ。何が、あったのじゃ。」
「はい。つい今しがた、目もくらむような光がさしたとたん、その光にまぎれて、老人の姿がかき消えてしまったのでございます。」
と、大臣が答えました。
「さては、あの老人が、南極老人星だったのか。」
「老人星が見える年は、天下太平だと言われているが、その星が、この都に下って、わしの宮殿にまで来て、酒を飲んでくれたとは、いよいよ天下太平のしるしじゃ。いや、めでたい、めでたい。」
皇帝は、たいそう、お喜びになりました。

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