英語版翻訳者のフィリップさんの来日


平成20年10月25日 写真・文 / HP管理者 木内正人

 HP『旧ソ連抑留画集』は様々な言語に翻訳されておりますが、そのひとつである英語版の翻訳をして下さったフィリップさんがこの度来日されました。英語版の完成によって世界の多くの国の方々に父の物語を知っていただけるようになりました。これもフィリップさんのおかけです。遠いモスクワ在住の方ゆえに、これまで直接お礼を言えなくて心苦しかったのですが、今回のフィリップさんの来日で私たちその思いを果たすことができました。平成20年10月25日の夜は、フィリップさんを日本料亭にお招きした楽しい宴となりました。

英語版「旧ソ連抑留画集」 英語版制作スタッフ


 フィリップさんが来日された目的はお仕事でした。東京国際映画祭への参加です。フィリップさんのお仕事はロシアの映画会社のCEO。来日中のほとんどは東京国際映画祭の会場である六本木ヒルズでのお仕事でしたが、この日はオフの日ということで、夜にフィリップさんとお会いすることができました。
 何より、フィリップさんと私たちには“言葉の壁”があります。フィリップさんは英語も話せるのですが、私は英語が大の苦手・・・。最初の難関は、彼との待ち合わせです。フィリップさんにとって、日本は初めての場所。そんな彼が迷わずに出会える場所を予め決めておきました。約束の時間に彼の姿が見えてホッとしました(笑)
 ともあれ、私の怪しい英語と、父のカタコトのロシア語だけがコミュニケーション手段なのですが、なんとかフィリップさんを連れて無事に宴の会場に到着することができました。

 

 私たちが宴の場所に選んだのは、上野にある『韻松亭』です。ここは、上野の杜の一軒家で、大都会の中にあって実に静かな日本的な場所です。
 父は原画を持参していたので、フィリップさんに直接お見せすることできました。彼のお父様は韓国系の方で、苗字もトンさんとおっしゃいます。ご先祖は帝政ロシア時代に朝鮮半島からロシアに来られたそうですが、社会主義時代は強制的な移住によってかなりご苦労されたようです。そんなルーツを持つフィリップさんゆえに、父のイラストに感銘されたのかも知れません。イラストをひとつひとつ観ながら時折目に泪をうかべているようでした。
 父は日頃から、“世界は友達だ”、“人間には国境がない”とよく言っているのですが。フィリップさんとの懇談も、いつしか言葉の壁を超え、楽しい宴の時間となっていました。今こうして国の違いに関係なく、一緒に食事をして語らうことこそ人間の本当の姿なのだということ強く感じ入った次第です。ちなみに、初めて食べた日本の味はどうだったのでしょう?その日のメイン・ディッシュは“スキヤキ”だったのですが、とりあえず美味しそうに食べて下さいました。何より、運ばれてくる食事も熱心に写真を撮ってました。しかも料理を運ぶ“なかいさん”まで撮ってました(笑)。きっと、思い出に残る日本の夜になって下さったと思います♪

 

 左の写真は、フィリップさんから頂いたロシアのお土産です。父が抑留されていたのは社会主義時代ということで、当時の旧ソ連軍将校の帽子と大砲の弾のかたちをしたウォッカを頂きました。特に旧ソ連軍将校の帽子に父は大喜びでした!(笑)。しかし息子である私自身が驚いたのは、父のイラストの正確さでした。記憶をもとに描いているにもかかわらず、色やかたちがイラストとそっくりだったのです。そんな私の驚きをフィリップさんに伝えたところ、フィリップさんいわく「お父さんが話すロシア語の正確さに驚きました」と言っていました。父は宴の間は、ずっとロシア語を話していましたが、フィリップさんの言葉に父も嬉そうでした。なお、私たちからは、父のイラストと、“組紐”のストラップ、日本の“めおと箸”などといったプレゼントを贈らせて頂きました。
 そんな楽しい宴は、気が付くと3時間近くも経っているではありませんか!(笑) “言葉の壁”がありながらも、
あっという間に時間が過ぎていました。そして、人と人との間に“壁”などは無い、小さな地球に住む私たちにそんなものがあってはならないと思いました。フィリップさんとモスクワのフィリップさんの奥さま、ご家族の皆様の多幸を、父と共に心よりお祈りしています。


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