魚屋さんや八百屋さんの大売出しには必ずチンドン屋さんが罷り出した。賑やかに太鼓と鐘とクラリネットに三味線。前後に旗振りを入れて5、6人が列んでやって来る。主役は前に抱えた太鼓の重さを利用して4、5回ぐるぐる回ったり、太古を下に置いてひと芝居打つ。大ミエを切る姿は、歌舞伎役者にも見られぬ大道芸で素晴らしかったもんだった。(昭和12年)