今から千三百年ほど昔、中国が「唐」と呼ばれていたころのお話です。玄宗という皇帝が国を治めていました。そして、とあるお寺に一行上人というえらいお坊さんがいました。ある日、このお坊さんのもとに一人のおばあさんがあわてて駆け込んできました。そして「息子が人殺しの罪で捕まってしまいました。でも息子は人殺しなどできる人間ではありません。何かの間違いです。このままでは息子は死刑にされてしまいます。息子を助けてください。」と言いました。一行上人は、このおばあさんに若いころ大変世話になったので、何か力になりたいと思いましたが、国が決めたことに口を出すことはできません。おばあさんはがっかりして肩を落として家に帰っていきました。

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