学生達の取材


写真・文 / 「旧ソ連抑留画集」HP管理者 木内正人

平成13年5月21日

 それは一通のフォームメールの書き込みから始まりました。メールを送ってきたのは日本映画学校の生徒である高沢君でした。メールの内容はこのようなものでした。
 「今、僕の通っている専門学校で「人間研究」という授業をやっています。「人間研究」は、僕達がこれから映画を作っていくために必要不可欠なことであり、自分自身にとっての、生きていく糧になるものだと思います。それで、僕達のグル−プでは、シベリア抑留について研究することに決めました。そこで、是非、木内信夫さんに取材をさせて頂きたいのですが・・・」 とありました。
 父木内信夫も、熱心な若者達の問いかけに断る理由もなく、喜んで取材に応じました。

 取材の日時を決め、5月21日に3名の学生達がやってきました。授業の後と言うことで、予定時間より若干遅れての到着となったため、来た早々に録音の開始です(写真左上)。父は少年時代のこと、軍隊での出来事、そして捕虜となったウクライナでの出来事を語り始めました。このような話を、若者達から積極的に聞きに来る機会はあまりなく、過去の例では、2年前当時、宮城大学在学中のハンドルネーム「クララ」さんから資料提供をお願いされて以来です(クララさんのまとめられた立派なレポートはこちら)。しかし、若者達がわずかであっても日本の近代史に真正面から取り組もうとする姿勢は、実に清々しいものを感じます。
 取材が終了したの時にはすっかり夜になってしまいましたが、彼らの“楽しかった”と一言は、取材される側にとっても、何にも代え難い時間だったことを意味しています。父にとっても本当に楽しい一日だったようです。

平成13年6月1日

 その数日後、再び彼らから取材の以来がありました。日時を設定し、その日を迎えました。2回目の取材メンバーは4名で、取材メンバー、内容も前回とは若干異なるものでした。おそらく1回目の取材をもとに、グループ内で討議されてのことでしょう。前回と同様に楽しい取材になったようです。父はまた映画好きでもあるので、映画の話題にも花が咲いたようでした。この2回の取材を、上手くまとまられたでしょうか?どんなレポートになっているか、とっても楽しみです。

 考えてみれば、父が出兵し、旧ソ連で捕虜となったのは、彼らと同じくらいの年齢の時。父は自分の若かりし日を彼らの中にオーバーラップさせていたのかも知れません。しかし、父が生きた時代と今を生きる彼らとでは大違い。第2次大戦の終わりと同時に、日本には平和と自由がやってきました。それから半世紀後の今求められているのは“自由の意義”ではないでしょうか。
 インターネットなど急速な情報化社会の到来によって、人々はかつてないほどの言論・行動の自由を手にすることができました。しかし“自由”とは、好き勝手な行動をとったり、無責任な発言をすることではありません。「自らが実行し、自らが責任をとる」それが“自由”だと思います。
 父は、取材に来た彼らの目が輝いていたと言っていました。自分たちの目標に向かって励む彼らを目を見て、国の未来、世界の未来の輝きが見えたのかも知れません。頑張れ若者達!!

 

平成13年6月9日

 彼らからの3度目の取材となりました。奇しくも西日本で多くの幼い命が奪われた事件の翌日。今日の平和な日本では、心に潜む恐怖が無神経なテレビ報道などの影響も相まって増幅されてしまうのが心配でなりません。私には意見する資格など無いかも知れませんが、将来メディアの現場で活躍されるであろうこの若者達には、良心と優しさをもって頑張ってもらうことを願うばかりです。
 さて、今回も取材メンバーの構成が違っていました。その中にはお隣の国、韓国からの留学生もいました。20世紀に互いの国が経験した悲しい歴史は、半世紀経った今も議論が絶えません。しかし、共に新しい時代を建設しようとしている清々しい彼らの姿は、国を越えた“希望そのもの”の姿です。ぜひ、みんなで手を合わせて、素晴らしい21世紀にしましょうね。
 この
「人間研究」のために集められた資料は膨大のようです。関係取材も含めると、録音時間は10時間以上とのこと。それを授業では40分の発表としてまとめられるそうです。皆さん頑張って下さいね! 最後に、取材に来てくれた高沢君の言葉で本文を結びたいと思います。

3日間有り難うございました!! お忙しいところ、僕達の取材を受けて頂いたことを
本当に感謝しています。 木内さんの弾いてくれたハ−モニカ、そして笑顔。
木内さん一家の心の温かさは一生忘れません!! そして、木内さんの言葉は
僕等の心に深く、深く、刻まれました。 これを、決して無駄にすることなく
明日の未来に向かって一歩一歩、努力したいと思います。


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