学生達の取材
写真・文 / 「旧ソ連抑留画集」HP管理者 木内正人
平成18年7月2日
学生さんの取材を受けるのは今度で2度目です。思えば前回の学生さんの取材5年前のこと。今回の取材も映画学校バンダイ・ビジュアル研究所で学ばれる学生さんでした。戦争をテーマにしたドキュメンタリーを制作されるそうです。戦争の記憶は風化しつつあるなか、映像を学ばれる学生さんがこうして生存者の証言を通じて歴史を伝えてくれることは大変喜ばしい限りです。
学生さん達は神奈川方面から来るので、北柏までの道のりは長かったことでしょう。取材は自宅近くの集会場で借りて行いました。午後1時半に到着し、早々にカメラとマイクをセットされて学生さんからの質問に答えます。終戦ののち、満州から北朝鮮への脱出と逮捕。旧ソ連での抑留生活と帰還までのエピソードを、イラストを交えて父が説明します。皆さんに熱心に耳を傾けて父の話を聞かれていました。
父が特に強調して話していたのは、捕らえる側、囚われる側の立場を越えた人としての心の交流でした。国民性こそ違うものの“人間性”そのものは万人に備わった宝であり、また人間誰しもが可能性を秘めています。戦争という不運な青春の中にも、人間だからこそ感じえる豊かなものがあります。そして若い学生さんたちには未来の可能性があり、またその可能性を大いに発揮できるチャンスがあります。熱心に聞き入る皆さんにも、そうした父のメッセージがきっと伝わったことでしょう。
取材が終了したのは午後4時。集会場の他の予約があったので、その時間をもって取材を終えました。梅雨の真っ只中ということもあって取材中は強い雨が降りましたが、取材を終えたときはすっかり晴れ上がっていました。若い皆さんたちにもこの日の晴天のような明るい未来があってほしいと思いました。またそれは、我々戦後生まれの人間が先人達の労苦を礎に次の世代に引き継ぐ努力を惜しまないことなのかも知れません。